会長挨拶

第19回日本司法精神医学会大会
会長 平林 直次

司法精神医療には、主体性よりも強制性のイメージがつきまといます。しかし、医療観察法や矯正医療においても、当事者の主体性や能動性が注目されています。我が国の司法精神医療でも、オープンダイアローグ、当事者研究、SAPROF(Structured Assessment of PROtective Factors for violence risk)などに注目が集まっています。これらの背景には、risk assessment and risk managementに加え、積極的行動支援モデルや社会内再統合モデルへの潮流が存在しています。司法精神医療においても当事者参加の流れが続いています。

医療観察法は2005年に施行されました。当初、三要件の中でも治療反応性をめぐって、活発な議論がなされました。医療観察法施行後、clozapineの導入、多職種チーム医療の定着、各種の治療プログラムの導入、多職種・多機関の連携によるケアマネジメント、アウトリーチなどさまざまな試みが行われ、医療技術はめざましく進歩しました。すなわち治療反応性は変化しつつあり、施行後から現在までの変化を振り返りつつ、現時点における治療反応性を明確にしたいと思います。

刑事責任能力鑑定については、これまでの学会においてもしばしば取り上げられ、活発に議論がなされてきました。精神科医が考える質の高い鑑定だけではなく、依頼者であり利用者である法曹関係者から見た質の高い鑑定について率直な意見をお聞きし、質の高い鑑定について学際的な議論を深めたいと思います。
多くの方の参加をお待ちしております。

令和5年(2023年)2月吉日